高校内居場所カフェとは

カフェというその名のとおり、昼休みや放課後に、空き教室、図書室、食堂、などを利用し生徒のためのカフェを開いています。
無料のおやつやドリンクが用意され、メロウな音楽が流れ、生徒がゆっくりとした時間を過ごします。
珈琲を飲みながらお喋りをしていたり、友人とトランプに興じたり、1人で本を読んだりしています。
そしてその空間には親でも先生でもないエプロンを付けた大人(スタッフやボランティア)がいます。
大人も一緒にトランプをしたり、生徒と話し込んだりしています。現在は大阪、横浜、静岡、北海道、など全国60か所以上で実施されています。
当法人では、大阪府教育庁の課題を抱える生徒フォローアップ事業を受託し、大阪府立茨田高校、野崎高校の2校で高校内居場所カフェを実施しています。

学校の中のサードプレイス

サードプレイス(第3の場所)という言葉があります。
ファーストプレイスは家庭、セカンドプレイスは職場(子どもだと学校です。)です。
サードプレイスは固定的な人間関係や緊張感からは程遠いリラックスした空間で、気軽に立ち寄れてたまたまそこにいた人と気楽におしゃべりができるような場所です。
(日本の代表的なサードプレイスは銭湯と言われています。)。
家庭内での暴力があったり、自宅に居場所がなかったり、家族のケアを担っていたりと、生徒が生活をする環境はさまざまです。
常に緊張と共に家(ファーストプレイス)で過ごす生徒がいます。
また教室(セカンドプレイス)で行われる人間関係や活動から強い緊張を感じる生徒もいます。
多数派のコミュニケーションにうまく馴染めない人にとっては教室は緊張感の高いところとなることが多いです。
セカンドプレイス内にサードプレイスである高校内居場所カフェを作ることで、生徒が気楽に立ち寄れます。
ひと時ではありますが緊張感から離れた時間を過ごすことができます。

相談の前に関係を作る

困難な状況にある人が自身の困難さを人に語ることは非常に難しいことです。
学校の相談室のドアを叩くためには、自分が困っていることを言葉にできる、知らない人に自身のことを話す緊張感や恥しさに耐えられる、など多くのハードルを越えなければいけません。
このハードルを越えられない生徒は潜在化してしまい困難さを1人で抱え込むことになってしまいます。「困ったらなんでも相談してね」と言われただけでは、このハードルは越えられません。
支援者の前に現れてくれるならば、相談の積み重ね⇒関係性の構築、と進めていくことができますが、そもそも困っている生徒は支援者の前に現れてくれません。
しかし高校内居場所カフェでは、カフェの大人としてまずは生徒に出会うことができます。
カフェでのただのお喋り、おやつやドリンクの受け渡し、ひたすらに好きなアニメの話を聞く、一緒にトランプをする、誕生日おめでとうの一言、そのような関わりを続ける中で、ある日ふとしたタイミングで生徒がポロっとこぼします。
「また昨日も怒鳴られて、、」
「今日は朝から何も食べてないねん。」
ふと話してくれたところから、生徒が抱えるしんどさが発見され支援がスタートします。
関係性の構築⇒ふとした相談、という順番です。また普段のコミュニケーション(人との距離感が独特)や服装(いつも制服が汚れている)などからも生徒の抱える困り感が発見されることもあります。

文化でつながる

カフェでは手作りのおやつや自家焙煎の珈琲なども準備しています。
「これ食べたことある、飲んだことある」「美味しいよね」は人と繋がるきっかけになります。
飲食だけでなく「この曲きいたことある、これで遊んだことある」なども人と人とを繫げます。
文化というと大げさかもしれませんが、ある高校生はオセロやUNOのルールを知りませんでした。
高校3年生になって初めてルールを知ったことで、他の生徒と同じ時間をすごすことができました。
子どもの貧困を考えるときに金銭的な貧困へのアプローチはもちろん必要ですが、同時に文化的な貧困へのアプローチも必要であると思います。
また、いろいろな大人の価値観に触れることも一つの文化体験です。
カフェにはいろいろな大人にボランティアで参加をして頂き、高校生とお喋りをしてもらっています。

2023年度の取り組み

大阪府教育庁課題を抱える生徒フォローアップ事業 2校 府立茨田高校/野崎高校

大阪府福祉基金地域福祉振興助成金地域におけるヤングケアラー支援のモデル事業 府立門真西高校